登場人物

景丸(かげまる)元服して信景(のぶかげ)を名乗るが皆は景丸と呼ぶ
  ナギサ 景丸の妹
ウィリアム・アダムス イギリス人船乗り 
  ユキ アダムスの妻 馬込勘解由(まごめかげゆ)の養女 
                   バタビアで暮らし英語を話す 
  ジョセフ 息子 スザンナ 娘
アダムス屋敷の人 
  タキ婆さん
  七助(しちすけ)爺さん 元武田武士
  吉崎左馬(よしざきさま) 郎党 元甲州浪人
徳川家康 織田信長は岡崎殿、浜松殿と呼んだが、秀吉は敵対した時に  
  は三河守、協力者となってからは内府と呼ばれる。家臣たちは上様と  
  呼び、征夷大将軍になってからは公方、将軍職を譲った後は大御所と
  呼ばれて府中(静岡)に住む。もちろん徳川家康が…などと姓名を呼び  
  つける人はいない、首がなくなる。その死後は庶民までも東照大権現  
  様と呼んでいた。
徳川秀忠 二代将軍
向井忠勝(ただかつ) 徳川秀忠の御船手奉行 アダムスと共に造船と航海  
  に活躍 江戸霊岸島と三崎宝剣山に屋敷を持つ
本多正純(まさずみ) 家康の家臣 玉縄城主から祇園城主となり、家康 
  没後、宇都宮城主となる。
本多正信 正純の父 佐渡守 家康の謀臣 秀忠のお目付け役
向井正綱 忠勝の父 徳川家康の御船手奉行 先祖は伊勢海賊。今川水
  軍に移り持船(用宗 もちふね)城主、今川滅亡後武田水軍の将とな
  るが家康に帰参。以後は徳川水軍で歴戦
ヤン・ヨーステン オランダ人航海長
サントフォールト リーフデ号副船長 ユキの妹ハナを妻にする 
コックス イギリス商館長
セーリス イギリス国王使節、公館設立と貿易の交渉のため来航
ソテロ  スぺイン人宣教師
伊達政宗 独眼竜と呼ばれる陸奥の大名 知勇兼備の将

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徳川家康
アダムス
ヨ―ステン

 もちろん徳川家康が…などと姓名を呼びつける人はいない、首がなくなる。庶民までも東照大権現様と呼んでいた。
 二代将軍秀忠の妻室は江姫という名だった。母はお市の方、姉は淀君、子は三代将軍家光と千姫ら、数奇な運命の姫だったが秀忠は熱愛した。当時は高貴な人をその名で呼ぶことはなかったし同じ文字を使うこともはばかった。たぶん敏感な正純の進言だろう、江の文字を柄に変えたのは。郷の人たちにとっては変わらぬ「ながえの郷」であったが漢字で表記するときには長柄と書かれるようになった、ただしこれは私見です。

 まだ標準語ができていない時代なので、家康は故郷岡崎の三河言葉、人質として過ごした駿河言葉、後に浜松の城主となってからの遠州の言葉を話したろう、たぶん江戸城でもそれが共通語になっていたのではないか。
「わらしをかまうな、えっ、ちょうけてるだけだって、しょんねぇろ、早く行かざ、しょろしょろすんなって」
…子どもをいじめるなよ、えっ、遊んでいるだけだって、しょうがないな、早く行こう、もたもたするなよ。
 というような響きの言葉だろう。しかし、江戸城では諸国の武士たちが謡曲を基本にした標準語・武家言葉で話したそうだ。
  物語は現代の標準語で記します。