新たに感染した者はただの115人、8月25日には2500人もいたのに、狐につままれたようだ。断じて首相が辞めたおかげではない、ワクチンとマスクと自粛がよくできたからそのご褒美だろう。しかし欧米では激しく感染している、アフリカ・南米も悲惨な状態だ、なのになぜ日本だけ…誰かが神の国などと言いそうだが森さんは穴ごもりしてしまった。コロナが神様の思し召しだとしたらきっと人間の在庫整理中なんだね。

 その広場にはケヤキの木が一本だけ立っていて日陰を広げている。子どもたちがゴムボールを投げる、スズメが飛ぶ、トビが滑空する、色々な影がまざりあう昼下がりだ。ベンチは空いているのだがうっかり座れない、不審な人に視られるからだ、子どもと母親たちの治外法権だね。
 白人系の父親がアフリカ系の子どもを連れてきた、サッカーボールを持っている。少し後に母親らしい日本人が急ぎ足でやってきた、手提げ袋におやつでも入っているのだろう。別に不思議ではないさ、欧米では養子が普通なのだからね。日本は帰国子女でさえ外国人扱いした頃があったんだ、そういう子どもに日本語をどう教えるのか学校は真剣に研究したものだ。
 アフリカ系のテニス選手やラテン系のサッカー選手が日本人として活躍しているのに違和感が残る、中国や韓国の人たちは、日本め!勝つためにまたズルをしたなどと思うだろうね。
 人種、宗教、言葉とか人を隔てるものがようやく消えていく、ユーロは国も消そうとしている。だが急激な変革は亡霊を呼び覚ますから気をつけよう、ポピュリズムだ、昔は良かったという嘆きを一網打尽にすくいあげる政治家が台頭している。社会主義中国だって革命の後継者を自負してふんぞり返っているのは二代目なんだ。北朝鮮なんか三代目だよ。その子がまた親を継承する、悪循環だね、遺伝子がいよいよ濃縮されてくるし突然変異で奇形が生まれることもあるからな。

 海は荒れていた。おおきなうねりが次々にやってきて岩に砕ける。家も体も揺れるほどの轟音が響く。しかし月は横一筋にたなびく雲をおしのけて昇ってきた。海上は月に照らせられて不気味に蠢いている。それまでは闇の鼓動だったのが、今は無数の生き物が押し寄せてくるようだ。
雲が月を隠すとまた月が押しのけて輝く。月は過去と行く末を光に浮かびだす、そんな狂気を誘うことがある。

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