このさなか厚労省は「輝くテレワーク賞」を選定した、一等賞は住友商事だ。このコロナ禍で四苦八苦しているのに役所はヒマなんだね。昔、江戸幕府は親孝行な息子に青ざし5貫文を贈る習慣があった、「孝行糖」という落語があるだろう、1両の半分だから幕末なら7万円くらいか。金額より名誉なんだよ。「輝くテレワーク賞」も額に入れて人事課にでも飾っておきなさいということかね。
その2日前には「イクメン企業アワード」という賞を積水ハウスに贈ったよ。父親の育児を援助する企業の実践を表彰するのだそうだ、はたしてテレワーク賞のことは念頭にあったのかな、育児とテレワークはミスマッチさ、共倒れだよ。そんなことを役所に聞いても、部署が違いますからと返事するだけだろうね。
この通りは一方通行なので車がふつうの半分しか来ないのさ、犬の散歩道にはうってつけだ。飼い主を従え、縄張りを確かめつつ大小の犬が歩いている、参勤交代のラッシュが朝夕にあるようなものさ。
可憐な女の子が大きすぎる犬に曳かれて歩いて行く、何かのはずみでリードを放した、しめたと犬が走り出す、ダッシュして犬を止めたよ。女の子は心からの笑顔でお礼を言った。翌日、同じ所で同じ犬を娘さんが曳いてきた。顔立ちがあの少女に似ているから姉なのかな、立ち止まって笑顔を見せてお世話になりましたと言う。青春の輝くような若い娘だ、見とれながら犬の名前を聞いて暑いの寒いのと言葉を交わしたよ。その翌日は少し期待していたんだ、あの娘に会えるかもと。誰も来ない、立ち止まって用事があるふりをして待ったんだ。自転車が走りぬけただけ、おやおやと思って歩き始めたら、来ましたよ。同じ所で同じ犬、今日はお母さんかな、清楚で上品な女性がニコニコ笑いながら近づいてくる。犬の名を呼ぶと尻尾を振ってなついてくる。犬がお好きですね、ええ家族ですもの。一緒になって犬の頭をなでた、顔が触れ合うくらいさ、化粧品の甘い匂いがした。もう夢中になったさ、翌日は早くから待った、同じ所で同じ犬をさ。ありがたい来たよ、顔立ちは似ていたがだいぶ熟女だ。これで散歩なのかと思うほど仕立ての良い服を着て優雅に笑いかける。すっかりお馴染みになりました、もちろん犬がさ。ご家族が多くていいですね、昔からの一族が同じ家に住んでいますから、ごく自然な会話だ。
翌日はきっとお祖母さんだと期待した、なら親切に犬を曳いて連れていって家を覚えてしまうのだ。そこで可憐な清楚な優雅な人たちと会うことができる。
ところが同じ所で同じ犬、肩幅の頑丈なぷっくり腹の出たハゲ頭の大男、そして犬もまったく知らん振りをする。犬の名を呼ぶと吠えかかった。大男が顔を真赤にして怒鳴った。気安く俺の名を呼ぶんじゃねぇ。スミマセンと言って逃げ出したよ。あそこにはもう行かない。
紅葉の名所は数々あるがススキを見に行く所はそうたくさんはないな。近辺だったら箱根仙石原と富士の裾野十里木の自衛隊演習場、どちらも車を停める場が難だが紅葉と違ってススキを見ながら一杯やるという風流はない。紅葉狩りの物語も最初は美女だが後は鬼女の恨み、山姥もススキの原の孤独、心地よく一献という風情ではない、きつい目で見なさんな、そうです正直にいえば酒ならどこでも飲みたいのです。
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