緊急事態を13都道府県に拡大した、連日全国2万人超の感染だ。政府は相変わらず三密と自粛と安全安心だ。安全安心というのは通学路で事件が多発したときの言葉だよ、子どもを守るっていう趣旨だったのに、首相は自分の政治的な安全安心を訴えているようだよ。
午後のスーパーには空白の時間があるんだ。数少ない客が売り場に沈みこんでしまってレジはぽっかり口をあけたようになる。パートの人たちもトイレに行ったり休憩所で腰を伸ばしたりする。もちろん無用心ではないんだ、監視カメラが作動しているしガードマンもいる。
突然サングラスと目無し帽の2人が走りこむ、誰もいないから少しとまどったようだがレジを開けて札をつかみ出す、といってもそれほど大金ではない。どこかで警報は鳴っているのだろうが店は静まっている。2人が逃げ去ってようやくレジに人が集まる、なんだか皆がうれしそうだ。訓練でもしていたのだろうかね。
この町のたった一つの銀行にもガードマンがいる、疲れた老人さ。生気のない声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と客に挨拶するだけの係だ、以前は信用のある立場の人だったのだろうね。
いざ銀行強盗が現れると老人に力がみなぎる、果敢に立ち向かって撃退する、実はそんなヒーローなのかもしれない。しかし、機会にめぐまれなければただの疲れた老人で終わるのさ。確かにニュースになれば時の人だ、ストレスをためると大事な寿命をすり減らしてしまうからね。
ちかごろは暴力団だって強奪よりもオレオレがトレンドだ、力から智恵に移行していく、その方がスマートだからね。しかしこれは完全に弱いものいじめだ、といっても反社会的勢力が明るく助け合う町づくりを担ったことなどないよ。橋蔵演じる昔の侠客だって健さん演じる戦後派ヤクザだって良き隣人にはなりそうもない。
暑い昼下がり、ヨーロッパの町は店も銀行も閉じてシェスタになる。守衛も泥棒もシェスタだ、困るのは旅行者だけ。
土用波の季節になった、クラゲが出るから海に入れない、カツオノエボシと言う怖ろしい生物が何の感情も見せずに人を殺す。高波で浜に打ち上げられたのを触っただけで激痛、なぎさに足をひたしていても千切れた触手に襲われる。ヒョウモンダコ、イモガイなど人を怯えさせるものが海には多い。どれも見せかけ弱そうで見くびった人間を襲うのさ。これはマフィアというより自然を守るガードマンだろうね。
次へ