五輪中止を提言する大臣もいたと新聞が報道する、首相は聞く耳持たなかったそうだ。秋の選挙のときに「私が五輪を」と言うためだろうね。感染爆発とか死者何百人とかいう事態になったらどこへ逃げだせるのかな。首相再任はないと皆が言っている。「ならば私がすべてをかぶります」という覚悟で堂々としていたらいいだろうに。緊急事態が解除され「まん防」に移行した、飲食店は酒を出してもいいというのだが7時までというのは早すぎる、ラジオ体操じゃないんだよ。まだ明るい時間だ、お茶では盛り上がらない、結局、店は閉めるんだという。

 クーラーから魚をはみださせて歩いてくる老人を見かける、釣名人なのだろうね。岩場の釣りらしく値の張る魚が多いがどうするのだろう、食べるのかな、毎日刺身、猫じゃないわよと奥さんに叱られているのかな。聞けばこう答えるかもしれない。
「年金だけではね…その足しに」
 なるほどあちこちの居酒屋に「釣り魚時価」と麗々しく値札が出ている、そこに卸しているということか。店も客も喜ぶ、結構な仕事だ、趣味と実益をかね、かつ年末調整からも逃れられる。
 それで置いてけぼりの話を思いだした。江戸の本所の七不思議、釣りから帰る道で気味悪い声が聞こえる…オイテケ。逃げればよし、なにをと立ち向かうとひどいめにあう、たぶん悪旗本と屋敷の中間なんかが悪戯して魚を盗ったらしい。
 居酒屋が「いつもありがとう、一杯飲んでいってください」まちがえれば税務調査に引っかかって脱税分をオイテケということになるかも、いや悪旗本とは言っていないよ。
 禁酒法の時代に似ていると知ったかぶりの識者が言っているよ、つまり抜け道があって人に知られずに宴会をやっている。うっかり入ると、ノンデケ、オイテケとぼられるんだ。結構なことさ。そちらに魚を卸すように手配してあげようか、毎日魚を食べさせられて奥さんが猫に変身するかもしれない。オイテケの声は化け猫だったというのでは怪異がだぶってしまうね。

 朝起きて外にでたら突然の夏に驚いた。空気がずっしり重くなって風がよどんでいる。昨日までは若夏だったのが汗っかきの中年の夏になったのだ。気象予報士は太平洋高気圧とか前線とか理屈を言うだろうが、夏だなという感じは言われなくても肌で確かめられるのさ。

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