ワクチン接種が始まった、まず医療関係者だ、これは接種する人だから一番必要だろうね。次に78才以上の高齢者だ、これは統計に死者数を増やしたくないからだろう。なんで学校・幼稚園の先生、交通機関、デパート・スーパー・コンビニの人を早く接種してあげないのか、居酒屋の親父だって補償金をもらうよりワクチン打って店を開いていたいだろうにね。しかし日本製ワクチンは間に合わなかった、国の開発費補助がスズメの涙だったかららしいよ。

 海岸にはいくつかの港がある。大型ヨットやクルーザー専用のヨットハーバーは一隻何億円の船を引き上げるデリクがある。漁船は岸壁に着くと丸太のコロの上を発動機がロープを引く。小さなディンギーやボートは波打ち際で台車に乗せてエッサエッサと人が引いていく。その価値にふさわしい扱いを受けるのは人も船も同じだよ。
 クルーザーが波を蹴立てて突進する。危ないぞ、その先には岩礁がある、乗り上げれば木っ端微塵、しかしいよいよスピードを増していく。酔っているらしい、派手なアロハと原色のパーカーが見える。岩礁にぶつかって乗り上げるとたちまち船首がバラバラになって、その勢いで船尾まで縦割りになる。人は四方に跳ね飛ばされ岩にぶつかりちぎれて海に沈んでいき、また浮き上がる。もつれた海藻の塊だと見えたのが土左衛門だ。だらしなくふやけている、それをどうやって引きずり上げるのか、誰が…もちろんそんなものはないさ、もしあったら嫌だろうなという話だけだ。死人には自分の価値を叫ぶ力は残っていないよ。

 我が家の鯉のぼりは2階手すりから庭木までを横泳ぎする。BBQをする時には降ろす、煙を浴びれば燻製になるからさ。地方では武者絵の幟に子どもの名前を書いて2本も3本も翻している。鯉も養殖池ほど数多く泳いでいる。若緑の屋敷林と茶色くくすんだ家に鮮やかに映えて快い。
欧米人は不思議そうにカイトと言う、しかし開放感は喜んでくれる。真鯉と緋鯉が男女共同参画しているのも好ましい。この頃は女の子の名前を書いた幟もチラホラ増えているようだが、子どもの名前は多様になった。どうしても知りたければピンポンと押して子どもの性別を聞いてみなければなるまい。

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