緊急事態はこの日までの予定だったが1都3県は継続された。夜8時には飲食店は閉める、高速道路のサービスエリアも閉まる。卒業・入学・送別・歓迎会は中止、夜桜見物なんかもってのほかだ、リスクが高いと医者は言う。日頃、口を酸っぱくしても医者の言うことを聞かない患者にうんざりしているんだろう、その鬱憤をここぞとばかり晴らしているような気分だな。
中国が強烈にアピールしてきた、香港を吸収すると全人代で決議した、一国二制度なんて当座の方便だったのさ。選挙には愛国者しか立候補できないと、もっともこれは本国も同じだがね。世界にコロナワクチンを無償で提供するという、日本の金持ちもこっそり入手して飲んだらしいがシンガポールは断固禁止したそうだ。ニセワクチンが大量に流通しているらしい、ともかく中国のすることは危ないね。
京都の道祖神はパワフルだ、季節ごとに誘いをかけてくる。コロナで祭りは一切やらなくなったが四季の風物は変わりない。花見に行かなくては、上賀茂神社の斎宮桜にまず挨拶をする。桜が優艶なのは暮れ方さ、沈んでいく陽光に照らされて、残光を身にまとう入相桜、舞妓さんと同じ恥じらう風情なのさ、雑踏の無遠慮な人混みにはかかわらない。
白無垢に角隠しという花嫁さんが新郎、親戚友人一同を従えて記念写真を撮っている。あれあれ撮影した後に花嫁さんは車椅子に乗ったよ、新郎が甲斐々々しく押していく。京都の女は男のトレンドをどう思っているのだろう。たとえば優雅で怜悧、合理的なヴィジョンと常に覚悟ができている精悍な男、たとえば織田信長かな。いややわ好かん、うち中年太りしはっていてもあのお方、と御目がねにかなった新郎なのだろう、幸せを祈ったね。たいまつの浄火を先導させて禰宜、巫女、新郎新婦、親戚友人が列をくんで進んでいく。拝殿の中から祝詞、神楽の音が響いて半刻ほどで式が終わる。今度は披露宴への行列だ。そんな様子を見届けるヒマ人は自分一人だけだったがね。
振り返れば斎宮桜の下に白と赤の衣装の巫女さんが送ってくれているはずだ、清楚なのか妖艶なのか微笑みを浮かべてさ。百鬼夜行の京都だから見ない方がいいよ、そう道祖神さんがささやいてくれた。
郷で一番早い桜はコンビにの裏の川っぷちにある。今年は早くてもう散りかけている。これからだんだんと咲くのだが木ごとに毎年同じ日を選んでいるようだ、木の個性は頑固だね。宴会どころか座り込んで花見をすることも自粛さ。日本人は右にならえだから人目も気にせずに桜の木の下で遊楽することなどできやしない。通りかかりにチラ見するだけさ。
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