ロシアはウクライナの占領地で住民投票を強行して無理やりロシア領にしてしまった。人の家にずかずか入りこんで、この部屋は俺のものだと言うのと同じさ。そして翌日にウクライナ軍が攻勢するとロシア軍は逃げてしまった。なんともはや、そんな国なんだね。コロナはお預けだ。

    早暁ふと目が覚めた、夜明け前の一番寒い時間だ、夢の中で自分はどこかの分岐駅にいる、以前に降り立った無人駅、夢の続きを見たいと思って蒲団に入ったが2時間もぐっすり眠ってしまった。ささやかな昔の冒険のひとこまだろう、いずれ思い出すかな、しかし夢は再現できない。
 先週は蛇の夢を見た、正夢なら大金が手に入る、ただし蛇の金なら冷たくて生臭くて感触が嫌だな。夢を人に話すと破れてしまうそうだ。その時は夢供養といって年の数だけ米粒を供えるとその夢が復元できると言うのが、やらないよ。守銭奴や銭ゲバになるのは嫌だ、ならば大金が出現するわけはない。
 そうそう寝言に答えてはいけないのだった。半分あの世に足を踏み入れている状態のその崖っぷちで応答をしたりすると、あちら側に転がってしまう危険があるからだって。
「財布がない。カバンの中に…ない…ズボンのポケットに…ない…バスに乗り遅れる、ああ乗れなかった」
 これなら大丈夫、明日の朝には目が覚める。
「あっ、あった。では行ってくる、サヨナラ」
 これは危ない、どこかに行ってしまうのだからさ。 あの時、声をかけなければ…雉も鳴かずば打たれまいに…そんな思い出は作らない方がいい。
 夢を見ない方が健康だよ、夢は五臓の破れというからさ、あっこれは落語のオチだった。

 朝からの雨がやんだらしい。手足の先にむずむずと力を感じて外に出るともう月が照っている。菊の花が香る。家の陰の暗いところにぼんやりと白く咲いている。取ろうとしたがやめたよ。雨風に耐え、ようやく一息ついた花だ、受難をさせては可哀想だよ。深い地面の中に根を延ばして土にしがみついている姿が見えるようだ。

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