コロナ感染者減少、先週比60%だ良かったねというが医者は冬を警戒している。落語のとぼけたヤブ医者が「何、木から落ちて骨が折れたと、ああ手遅れだ、落ちる前に来ればよかった」と言う感じだよ。そんなことを聞かされればホテルも土産物屋も暗い気持ちになるだろう、医は仁術なんて教えてもらわなかったんだね。
「俺がせっかく一緒に食おうって言うのに嫌だというんだな」
「食えなくなっちゃったんですよ」
ラーメン屋の入り口で茶髪とスキンヘッドが言い争っている。
「俺だってラーメンは大好きだったよ、でもあのことを思い出すと食えないんだ」
「誰かだめだと言ったのか」
「胃が言うんだよ」
さじを投げたように茶髪が歩き出してスキンヘッドがしょんぼりついていった。茶髪が振り返って笑う。
「俺も経験したよ、胃が思い出すんだろ、あんな現場を見たら誰だってラーメンなんか食えなくなるよな」
確かにラーメンは危険な食べ物さ、あの汁の中に入っているのはミイラになった小魚、豚の骨、ニワトリの残骸、化石のカツオやサバだ。それらが熱湯の中で何時間も煮られる。焼豚の薄く削がれた痛みや引き抜かれ切り刻まれるネギの恐怖。タケノコは支那竹と蔑称される。そんなものが雑多に大鍋の中でブクブク泡を吹いている。
私も昨年の夏の盛りにこの危険な食べ物をかっこんで食いすぐ報復された。真っ白な砂浜の端の洒落たトイレに走った、ティッシュがない、あの驚愕。
スキンヘッドの体験したのはもっと強烈なものだろう。テキヤの仕切りでヤキソバやラーメンの調理現場を身近に見たくらいでは強靭な胃は拒否しないものさ。風呂の中で孤独死した人はラーメンみたいになるらしい。すると茶髪とスキンヘッドは現場捜査の刑事さんだったのかもしれない。
験知は人を臆病にする、兵士も警官も葬儀屋も、たぶん最も鈍感なのは食通だろうさ。 ラーメンは辛いとか濃いとかのキャッチフレーズだけでなく怖いというのを売りにしたらどうかな、激怖大盛り一丁なんて迫力があるよ。
国は熱中症が悩ましいようだ。節電節水を呼びかけている手前、エアコンを使いなさいとは言いづらい。しかし家篭りしていればコロナ以上に死を招く事態が起こる。そこで不要不急がまた登場したよ、命を大切に、必要ならまよわずエアコンを使ってとなんだかわからない。熱中症で亡くなった高齢者の家にはエアコンなどないのだろう。蚊はコロナを媒介しなかったよね。
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