5歳未満の子どもにワクチン接種を始めるそうだ。希望者は申し込みめと言っても本人には判断できないね。それでソーシャルディスタンスもお蔵入りマスク着用も緩和するという、マスク会社が緊急財政補助を求めないのかな。コンビニも売り上げが伸びてきたし企業も円安で儲けている。県ごとの旅行割りを拡大してのブロックごとに補助金を出すという、外国人歓光客も大歓迎、つまりアフターコロナというのは単に元に戻すというだけのことなんだな。

 安珍清姫かい清玄桜姫かい、和服の娘と黒衣の坊さんが連れ立って歩いて行く。手はつないでいないよ白昼だから、たぶんそんなことではない仲なのだろうね。
 楳図かずおの画を思い出してしまった。坊主の目が大きくなる、血管が四方から伸びてきて蜘蛛の巣のように黒目を囲んでいく。髪を剃った丸い頭に膨れ上がった目。もちろん娘の顔も変化していく。唇は左右に鋭くひろがって蛭のようにうねっていく。白い牙が大きくなり顎が歪んでいく。
なんのセリフも物語もいらない、顔の絵だけで十分に怖さが無言で迫ってくる。
 坊さんにはお経という武器があるから恐怖はないだろうね、妖鬼であろうと怪物であろうと気にも留めないから退治する必要もないわけだ。たぶん心に邪念がないから毎晩熟睡しているだろうさ、うらやましいね。
娘には色気という手段がある。キャアと叫べば助けがくるから安心だ。むしろ危害を受けるより及ぼす側に立つことの方が多いだろうよ。女は化ける側さ、化かすのに尾がいらんから花魁と昔から言っている。
 二人は竹藪のある細道に入っていく、ここは寺の裏側だった、坊さんは迎えにきただけなのさ、そして娘は…だれでもいいや、つまらんことを考えない方がいい。それにしても偉大な楳図かずお、こんな当たり前のことから身の毛のよだつ恐怖を喚起してしまうのだからね。

 ザクロの花が咲き始めてあっという間に枝いっぱいに広がった。妥協のない自己主張の赤い色、イランのザクロス山脈から来たという、かの地の女性はそんな模様の布を身にまとっていたっけ。花も独特だが実も異国そのものだ、こんな湿気の多いところは場違い、暑熱の乾ききった大地を反映する。受粉する虫はどんな恩恵を求めて寄ってくるのだろう。

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