おそろしい物価高になりそうだよ、「立ち食いソバが千円になる日」なんて週刊誌の見出しだ。ソバ粉も小麦粉も大豆も産地はロシアとウクライナなんだって、だからかき揚ソバなんてもろに値上がりするよ。ただロシアも部品の輸入ができないし資産は凍結、戦費が毎日1兆円、崩壊の危機だそうだ。まったくコロナを忘れさせてくれるよ。

 観光客はこの郷にファンタジーを求めてやってくる、だから店もその手伝いをして見返りを頂戴するのさ。
 オープンテラスで母と娘が紅茶とケーキを前に座っている、おそろいのワンピースだ。時々上を向いて話しかける少女の仕草はまるで妖精だ。母親はゆったり構えて慈しみの目を向ける、実はこの組み合わせは白雪姫と魔女なんだ、美しいのは私か娘のどちら?と聞くライバルさ。しかし嫉妬などは無意味だよ、母親はすぐに老い、少女も生理を迎えて女になる。きっと男を大事にして母は拒否される。それが心身ともに成長するということなのだが、少し寂しいね。
 イギリスのコティングリーという町で少女が妖精と会った、少女は清純だからウソをつかない…コナン・ドイルの写真だ。これが腕白小僧だったらシャーロック・ホームズでなくてもトリック写真だと笑い飛ばすだろうがね。
 ジャンヌダルク以前も以後も、奇跡を起こすのは少女だ。もっとも少女が妖精でいられるのは生涯のほんの数年だけさ、そして、それが一番危険な時期なんだ。多くの母親は魔女の素質を具えているからね。
紅茶とケーキの少女はどんな奇跡を起こすのだろう。とりあえず爺さんの足を止めて面影を記憶に残したよ。うれしくもないだろうけどね。

 富士山の雪が三分の一になった。まさに絵に描いた富士さ。山脈は黒く沈んで山ヒダを隠してしまった。上げ潮らしく波が小刻みに寄せてくる。大きな音を立てる波はあまり迫ってこない、小さな波音で足元まで寄せてくる波がある、油断せずに何歩か引いておこう。稚魚の群れも出てきた。若い女性2人を載せたボートが曳航されて沖に行く、何か内緒話があるのかもしれない。

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