中国の感染が急増だってさ、五輪の置き土産か、例によって強引に都市封鎖をしている、民意も人権もない国だからね。韓国の感染が毎日30万人という、ここも大変だ。大統領選挙で熱狂したからだろうかね。
 タイとかベトナムがそろそろ観光客誘致を始めたよ、国内旅行会社も浮き足立ってきた。
 それにしてもウクライナのゼレンスキー大統領はよくやっているよ、チビで俳優、それもコメディアンだそうだ、人物評価を間違えたロシア軍部の大失策だね。

 砂浜で白い月を見ている、おぼろ月だ。死んだ友を思い出した。ビールを浴びるほど飲んだ男だ。難しい議論をし合って、お前のお経などは聞きたくないと罵った男だ。年若い妻が子とともに新興宗教に走り、つまらなくなって自死した男だ。記憶は新たになる。
 姿をくらました友がいる。自負心の強い男だ、そこに付け込まれて借金を背負い身を隠した。その直前に道で会ったんだ、上の空で挨拶を返したがさえない顔だった。何事か言おうとするので、なんだいと体を寄せると、すっと離れた。じゃあと言って去ってしまった。その心の中がむなしい。
 月は女神で太陽神は男、アマテラスという日の女神は世界で珍しいそうだ。古事記の頃、女帝が続いたので権力者の藤原不比等が忖度したのだろうね。月は農耕にも航海にも欠かせない情報を与えてくれる、満ちたり欠けたりして人に語りかけてくれる。
 月に甘えてみよう。思えば遠くへ来たもんだとつぶやいてみる。下駄を鳴らして奴がくると口ずさんでみる。友よ夜明け前の闇の中でと繰り返してみる。言葉は無力だが月光は癒してくれるよ。
 雲が流れて月は海の上に一筋の光を注ぐ、そこが竜宮だ、死者も生者も顔を見せて言葉を交わす。いつか狂気に誘われるのが怖いから一人で月の光に身を曝さない方がいいよ。
 寛一お宮が見た月をトリケラトプスも仰ぎ見た、というのはどうだい。

 季節も動揺しているのか4日寒くて4日暖かい。コートの日とTシャツの日が入れ替わる。雨も風も激しい日、その翌日は谷戸の田んぼが満々と水をたたえていて、カエルの声も聞こえたよ。畦道にはツバキ、里山にはサクラ、いい季節にはなったが日替わりで服を代えなければならないんだ。

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