ロシアがチェルノブイリを攻撃したって、まったく見境いない行為だ、戦争だからさ。韓国大統領がムンさんからユンさんになった、礼砲代わりに北朝鮮はミサイルを打ったよ。そんなことよりガソリンが値上がりだ、トリガー条項というので政府が補助金を出す。他の物もどんどん値上がりするがこちらには条項がないんだそうだ。けれど、すべての経済に政府が口を出したら社会主義の再来だよ。

 コロナ禍でも髪は伸びるので床屋は安心安堵だ。ただ作業は3密だし客はマスクをつけられない。会話は控え目にというのだが床屋といえば世間話の世界なのにね。客のいない時には床屋の親父は新聞を読みテレビを見る、だから政治経済芸能から競馬競輪まで知らぬことのない事情通だ。どんなことを聞いても確信を持って答えてくれるよ。たとえ、それが多少怪しくても決して訂正したり議論してはならないんだ。なぜなら客は布とタオルに包まれて身動きとれないのに親父の方は研ぎたての鋏と剃刀を自由に操れるのだ。何人の血を流してやったなどと自慢しないだけなのさ。
 新聞に顔をつっこみながら親父が通りを伺っている、マスター、ご主人、親方、まさかスタイリスト?なんと呼ばれたがっているはずはないが、ここでしくじると後が気まずいから緊張してしまう。
「今日はどんな風にしましょうか」
 要領よく答えないと軽蔑される、半可通は嫌がられる、その顔でよく言うよと心の中で冷笑されるんだ。
 さて寝ていいものか。あなたを信頼します、熟練した鋏の音が心地いい、あなたは名人だとお世辞を態度にして示すんだよ。でないと何という寝顔だアホそのものだ、こんな奴にサービスするなんて情けないと思われてしまうのさ。
 鏡にうつる映像を見る、年取ってもナルシストは見栄えのいい顔だと思いペシミストは相変わらずみっともない顔だと思う。三角縁神獣鏡をのぞきこんでいた人もきっと同じだったろうね、鏡はありのまましか映さないんだ。

 京都を歩いた。裏通りの八百屋でミカンを買った、一皿盛で安くも高くもない。お婆さんがゴソゴソと紙袋に入れてくれて、ついでにおまけを…いりませんと答えた、旅先で一人だから食べきれないし荷物になる。いぶかってお婆さんは険悪になる、おまけだから受け取りなさい、腐った物を押し付けたのではない、好意を踏みつけるのか。お客さん、おまけを受け取れないんですか、京言葉がきつい響きになる。めんどうだからもらってきたよ。

  次へ