突然のウクラナイナ侵攻だ、コロナのニュースは隅っこに追いやられた。朝夕ウクライナばかりさ、たちまちロシア軍が制覇かと思ったらウクライナは市民軍まで作って迎え撃っている。日本からも志願兵が70人、ただ出国できなかったらしい。プーチンは皇帝になりたいんだね、歴史に悪名を残すだろう、習さん金さんも目が離せないようだ。
 昨年の出生数が84万人だって、死亡は145万人だ、政府のキャンペーンが生めよ増やせよになるかもね。

 シロアリ駆除と広告を描いた車が寺に止まっている、大繁殖しているのかな。あの透明感のある体で柱を食べ床板を食べ生殖しコロニーを拡大していく、寺や城ではずいぶん怖れたものだ。
叱責されて憤死した僧の怨念がこもってシロアリになった。夢枕に立って寺を食い尽くすと宣言した、おそろしい呪いだ。駆除してもいよいよ増えていく、さあどうしよう。さすがに寺だ、供養の用意はできている。何日も経文を唱えたので僧は成仏しシロアリも消えた。それにしても恨みをはらすのがシロアリとはずいぶん身近なものを選んだね、生きている時に何かシロアリとかかわりがあったのかな。
 もっとも僧の亡魂が紙魚になって経文を食い尽くそうとしたという話もあるし、建物を埋め尽くす毛虫になった僧もいる。クモになったりウジ虫になったり、僧の怨念というのはどうもいただけない、蠢くものばかりさ。供養されるとあっさり消えてしまうというのもいかにも物欲しそうだね。
 この寺のシロアリも怨念かもしれない、まず供養して様子を見ればいいのさ、駆除してたくさんの命を滅ぼすのは慈悲深いとはいえない。もしかすると住職に自信がないのかね、生臭お経を唱えたらシロアリはいよいよ増殖し、紙魚や毛虫のお仲間まで連れこんでくる、そうなったら大変だからさ。
 コロナ退散の祈祷をしている寺もあるそうだが、もしかすると生臭祈祷のせいでウィルスが大増殖しているということではないのかね。いやいや有難いお寺で有難いお経を唱えてくれるのだから夢にもそんなことを思ってはいけません、でも。

 透明だが粘りのある小波がたえず寄せている。すぐに一瞬の夕焼けとなる。肌寒くて引き返す。道端の家々は窓を閉ざして人の気配がない。廃屋の主は猫だ。様々の意匠に身を飾った猫が次々に行く人を見送り鋭く睨みつける。すぐに暗くなるが猫は喜んでいる、闇こそ我が世界、ペットなんかにならないぞと誇っている。

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