世界中は激しい感染に苦慮している。非常事態宣言、都市封鎖、外出禁止など厳しい感染防止措置をとった。日本もGOTOトラベルを停止した、ただ予算だけは温存しているらしい。忘年会クリスマス会なし、外食時間短縮、日頃、傲慢な態度のラーメン店主が泣き言を言っていた、それを取材するレポーターは少しうれしそうにも見えた。 
 自民党幹事長が野球や演歌の大御所を招待して、ついでに首相を呼びつけて皆で肉を食ったね、宣言直前だ。首相は陳謝したが幹事長は知らん振りさ。 
 ソロキャンプというのが流行っている、山や海辺で一人でテントを張って寝るだけだ。焚き火番組も盛んだ、タレントやクリエイターたちが焚き火を燃しながらボソボソしゃべるだけ。なんかやけくそみたいだね。 

 暗い空の下を歩いている。川の流れは音絶えず、星は黙って天空を飛んでいく、そんな夜明け前のひとときだ、といってもここは町、信号は点滅し続け自販機は輝きコンビニは自動扉で人を招いている。駅に行くために長いトンネルを歩く、迫ってくる足音、追い抜いたのは誰もいないのに律義にマスクをした男、会社員らしい。道の終わりは駅だ、ぽっかり開いた空洞のような改札口が人を吸い込んでいる。牛丼屋から人が出た、やっと生活感が生まれ出た。 
 なぜ歩いているのかって、始発電車に乗るためさ、暖かい電車の中でうとうとしているうちに海を見下ろす高台からご来光が拝めるというものだ。太陽はこの季節にずいぶん寝坊するから時計だけがいらだったように時を告げるのさ。 
 腹の中に人をたくさん飲み込んで電車は夜から朝に向かって走っていく。なんのために早起きして?それは温泉に使って暖かい部屋に温かい食事、何もしないでいい時間を過ごすためさ。  

 分け入っても分け入っても青い山…の季節は過ぎて今は山も川も大気も人を抱いてはくれない。山道の枯葉は砕け、雪が舞っている。草も木も季節を受け止め生き物たちに恵みを与えようとしない。 
 山眠る、熊もムササビも眠る、だがやがて目覚める朝を迎える。 

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