日本の感染者は2千人だがイタリアでは死者が1万人超になった、ミラノには中国人のコロニーがあって春節の出入りが多かったからかな、マンジャーレ・カンターレ・アモーレの世界だから三密なんて聞く耳持たないだろう。地続きの国は警戒を強めた、ロックダウン、都市を封鎖してしまう。中国なんかそれが徹底できる国だから武漢は完全封鎖で食料も配給だそうだ。すぐにヨーロッパもひどいことになりそうだ。
コロリじゃないよコロナ、さっきバイクで走りすぎた坊さんもきちんとマスクをしていた、葬儀だか法事だかこういう時期をチャンス到来として布教に励めばいいのにね。死の不安や焦燥をコロリと消失してくれるのはアマビエでなく神様仏様だ。それを中継ぎしてくれるのが宗教者だが近頃は生活難で衆生などにかまっていられないらしい。団塊世代は長寿だし若い人は結婚しない、山林漁村は無人になりつつある、救いを求めてせっぱつまっているのは坊さんの方らしい。
コロナはあっというまにコロニーを壊してしまった、握手も談笑も人々が触れあうことができない。コロリはコレラ、文政、安政という時代に大流行した。この郷の近くでも死者が出て火葬の灰が作物にかかると大変だと心配したそうだ。それでも江戸っ子たちは軽薄に強がって戯れ絵を描いたり小噺を作ったりして茶化そうとした。
コレラもペストも世紀末の病と言われたが令和はまだ始まったばかりだよ、先が思いやられるね。
夜の激しい雨で木も草も新しい服を身にまとったようにつやつやと輝かしくなった。ひらりと頭の飢えを黒い影が走った。
「あっツバメだ」
「渡って来ていたんだ」
南の土地から海を渡って飛んでくる、卵を産んで子を育て、また南へ帰っていく、おなじみのお客さんだよ。しみじみと空を見上げてツバメがうらやましかった。イタリアに行きたいなと思っていたからさ。我々は飛行機が飛ばなければどこにも行けない。ツバメはコロナなんか知らないから毎年の旅をしてきた。やれやれ、これがいつまで続くのかね
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